私の中にあるもの 27

毎日のように目にするウェブ内の世界では女性がそういう行為をすることは従来私が考えていたほど特異な事ではなかった。もちろんウェブ上の情報は必ずしも事実ではないことは分かっていたが、日常的にその世界に触れていると次第に自分の価値観も浸食されていた。
その上、双方合意の上で成り立っている行為よりも、少々無理矢理めいた行為やソフトなSMを含んだ描写の方が体にもたらす熱の大きいことを自覚していた。背徳感に溢れる状況の方が、そうであるからこそ、より自分の中に淫靡な衝動を作り出していくことが、普遍的なことなのか、嗜好的なことなのか、私には判断できなかったがどちらでも構わなかった。
それよりも、確かに自分を導いているこの幾分アブノーマルな虚構がもし現実になったとき、私は小説や漫画を読んでいるときと同じように熱くなれるのだろうか。痛みを伴いそうなものには嫌悪感が強すぎるから、陵辱や体感的なSMについては想像するまでもなかったが、例えば言葉で責められたらどうなんだろう?
これまでの無言の行為とは全く違った行為、今、目の前にあるウェブ小説で描かれている二人の姿に裕二と自分を置き換えてみる。開かれたページには男子生徒に突然襲われた教師が抵抗しながらも溺れていく様が細部にわたって記載されている。
この男子生徒のように見つめられたまま「こんなに濡らして感じてるんだ。」と裕二に吐かれたら?
駄目だ、想像しただけで困惑してしまう。
「やっぱりあり得ない・・・。」
私は頭の中で繰り広げられた想像、いや妄想を払いのけて呟いた。

裕二は思ったとおり正午過ぎに寝室から出てきた。
簡単な昼食を済ませてすぐに裕二の車で私たちのマンションから最も近いショッピングモールへと買い物に出かけた。その店舗はスーパーと何店かの専門店が併設されていて、本体のスーパーの品揃えがかなり充実している。地理的に駅からかなり離れている上に、マンションからは車で30分程あり、徒歩や自転車で行けるものではなかったから裕二に車を出してもらわないと来られない。頻繁に来店できないこともあって一度買い物に来るといつもかなりの荷物になってしまう。
土曜日の午後ということもあってお店の駐車場はほぼ満車状態でかなりエントランスから離れた場所だったが、他の車が出車するのを待つことなく駐車できた。
そういえば、裕二の車に乗るのも、こうして二人で外出することも随分久しぶりだな。
隣に並んで歩く裕二の横顔を見上げて思う。
天気やこの店の客足など他愛もない話をしながら、店の入り口まで駐車場を横切るように歩いていた。
「危ない!」
その声にはっと我に返る前に肩をぐいっと引き寄せられて裕二に抱きすくめられるような格好になった。驚く私の横を軽自動車が走り抜けていく。
裕二が「大丈夫?」と少し体を離して私の顔を覗き込んだ。
「うん、ありがとう。」
何でもないことを確認すると、裕二は遠ざかるさっきの車に「駐車場なのにとばすなよ。」と小声で悪態を付いた。そのまま肩に回された手が私の手を掴んできたので、ちょっと戸惑ったが軽く握り返すと、照れ笑いを浮かべた顔をこちらに向けた。

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