私の中にあるもの 35

なに挙動不審になってるんだろう。
私が頭の中でこのようなことを考えているとは誰も気づきはしないのに。
コーヒーメーカーの水タンクを確認すると水は底の角に少し残留しているだけになっていた。
そういえば、ひとりエッチについて思い悩んでいたとき、不思議と裕二がしているかどうかについては気にならなかった。私にとって女性のひとりエッチは十分秘密足り得たけれど、男の人のそれは当たり前のことでしかなかったから、比較する対象にはならなかったというところだろうか。
不意に隣に気配を感じてびくっとした。
「うわっ!」
弾みで注いでいたコーヒーがコーヒーカップからあふれ出してソーサーに満ちる。
「大丈夫?」
祐二が汚れたソーサーの中身を流しにあけてから、ソーサーを軽く水で洗い、布巾で拭った。ガラス製のポットを持ったまま、私は全く動けないまま、祐二がコーヒーを受けきれなかったカップの外側を布巾で拭って先ほどのソーサーの上に戻す様子をぼんやり見ていた。
「どうしたん?ぼーっとして。」
祐二が私の顔を窺っているのに気づき、あわてて残りのカップにコーヒーを注ぎ始めた。
そういえばお昼に今夜の準備をしているときも、突然背後に裕二が立っていてびっくりしてしまったな。
「ちょっと酔ったかも。」
「えっ、マジで?」
「祐二ほどじゃないけどね。」
滅多に酔わない私がぼんやりして『酔った』とのたまったりしたので、結構本気で心配しかけていた祐二も冗談であることに気づいて「なんかひどい言われよう。」と苦笑していた。
「祐二、お酒臭い。」
祐二の吐く息にかなり濃くアルコール臭を感じて眉を潜めた。
「うそっ、臭うか?理恵の方が飲んでんのにほんとに分かる?」
同じ量を飲んだときは祐二のアルコール臭を私は嗅ぎ分けられるが、私のアルコール臭を祐二は感じないらしい。祐二が普段より多く飲んでいるとはいえ、今夜は私の方が明らかに量は多いはずだから、お互いに臭うかもしれない。
「私は臭う?」
裕二がくんくんと鼻をならして不審な表情になる。
「臭わないけど。」
「えーちゃんと匂ってみてー。」
近づいてきた裕二の鼻先にはあっと息を吹きかけて、その距離に少しどきっとした。
「わからん。やっぱ理絵の体はアルコール清浄機が付いてるんちゃう?」
憮然とした表情の裕二がおかしくて笑ってしまった。

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