私の中にあるもの 32

テレビを注視していた二人もこちらの様子に気付いて、高瀬はにやにやしながら「おうおう」と冷やかしの声をあげ、宏美も最初こそびっくりしていたようだが、高瀬に合わせるような表情になっている。
「もうっ!裕二!」
恥ずかしさが込み上げてきて、裕二の体を引き離そうとするが、完全に酔いが回ってしまったようでもたれかかったまま動かせなくなった。
「裕二かなり飲んでたもんな、めずらしく。」
「わたし、裕二さんがこんなになるの初めて見ましたよ。」
二人の声はとても楽しそうだった。私も裕二のこんな酔い方に接するのは初めてかもしれない。
起こすのは忍びなくて、そのままの体勢を保とうとしたが10分もすると耐えられなくなり、正面から支えていた裕二の体をずらしてそっとソファーにもたれかけさせようとした。しかし、力の抜けた肢体を手だけで動かすのは無理があったようで、裕二の体はソファーに倒れかかっていき、あっと思う間もなく、反動で裕二の頭ががくんと揺れた。
「ん・・」
ゆっくりと瞼が上がって深くうつむいていた頭が上げられる。覗き込んだ私をしばらく眺めた後、照れくさそうに呟いた。
「もしかして寝ちゃってた?」
「10分くらいね。」
「うー飲み過ぎだ・・・。」
高瀬さんが笑いながらからかう。
「今日は誰も飲ませてないぞー、自業自得!」
「うるさい。」
低くうなるように吐き捨てて裕二は勢いよく上体を起こし両手で頭を抱えるようにした。
「気持ち悪い?」
「いやそれは大丈夫。ちょっと寝たら楽んなったよ。」
確かにさっきまでの前後不覚な雰囲気は消えて、常の裕二に戻っているようだ。
裕二は立ち上がって重い足取りで、部屋から出て行く。
ふらついている様子のない後ろ姿にほっとしながら見送るとトイレの戸を開ける音がした。
裕二は寝入ってしまう前の行動は覚えているのだろうか。
「あいつさっきのこと覚えてるよ。」
「えっ?!」
一瞬無意識のうちに思っていることを口にしてしまったかと勘違いしてしまうほどのタイミングで高瀬が小声で囁いた。

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