私の中にあるもの 42

頬を温もりで包まれている心地よい中で目が覚めた。裕二が微笑を浮かべて私の顔をじっと見ていた。頬に感じた温もりは裕二の手だった。
「おはよう」
軽く触れるだけのキスと共に声をかけられた。
「おはよ・・」
ベッドで裕二とくっついて眠っていたらしい。私も裕二も何も身に付けていないことを知って、一気に眠る前の行為を思い出した。
現実感に薄かったが、夢ではないのは分かる。顔が熱くなるのを知られるのあ恥ずかしくて裕二から目を反らせた。
あれ、リビングのソファーでしちゃったよな、なんでベッドに居るんだろう?
てゆうか、セックスの最後の方、記憶ない。
もしかして最後にいっちゃったまま眠ってしまったのだろうか。
「りーえ!」
裕二が更に体を寄せてきた。密着した脇に感じる裕二のものは堅くなってアピールしていた。
つい体を捩って避けようとするが裕二はそんな私の逃げを気付いているのか気付いていないのか、ますますぎゅっと寄り添ってきた。
「もし起きれるんならシャワー浴びた方がいいよ。」
「んー」
眠る前にシャワーは浴びていたが、その後の行為で随分汗を書いてしまったから全身の至る所がべたべたする。顔さえも洗わないままで肌の表面がかぱかぱしていた。
「てかごめん。昨日ゴム取りに行く余裕なかったから理絵の上に出しちゃったんよ。」
「えっ」
ぎょっとして裕二の顔を見ると、申し訳なさそうにしている。
「理絵動かねーし、一応拭いたんだけど。さすがにシャワーは無理だった。」
ゴムなしですること自体初めてでかなり印象深いはずなのに、裕二の射精を見た記憶がない。
・・ていうことは、その前に意識が飛んでしまっていたということ?
「ごめん理絵、ちょっとやり過ぎたよな、なんか俺、抑えきかんかった・・」
確かに昨日の裕二はいつもと違ってかなり強引だった。いつもならば、私が拒否したことはすぐに止めてしまうのに、昨日は嫌だと言っても押し進めてしまった。
裕二が弱気になって探るような目でこちらを見ているのが少し可笑しくて、ふと悪戯心が芽生える。
「やだって言ってもやめてくれないし。」
恨みがましい声で睨み付けると、一瞬目が泳いで縋るような表情になった。裕二ってばかわいい、と思ったのも束の間、彼の顔から急に怯んだ様子が消えてにやにやし始める。
「でもやめない方がよかっただろ?理絵いきまくってたし。」
その言葉に恥ずかしさと腹立たしさとそして情けなさが一気にこみ上げてきた。形勢逆転。
昨日のようなことがあった後で何を今更と思っても、やっぱり自分の性欲の強さを正直に認めて笑い飛ばしてしまえるほどの覚悟はまだできない。
「なんで泣くの?りえーごめんごめん。」
裕二がぎょっとした様子で謝り始める。
「泣いてない!」
実際の所まだ涙は流れていなくて、眼球を覆う涙量が極限まで満ちていた状態だったが、表情はもう崩れていたのかもしれない。
「いらんこと言ったよな、ごめん。」
裕二が私の頭を肩に引き寄せてぎゅっと抱きしめた。滲み出た涙は裕二の素肌に染み入ることはなく、彼の肩も私の下瞼も濡れてしまう。そのまま裕二は何も言わずに後頭部をゆっくりと撫でている。彼の手の感覚に先ほどの精神的恐慌状態が凪いでいくのが分かった。
少し冷静になると、私は昨夜の状況をもたらしたそもそもの原因を思い出した。ひとりでやっていたところを裕二に知られてしまったことを今まで失念していたことに気付いた途端、自分の馬鹿さ加減に顔が赤くなったが、幸い裕二はぼんやりしているのかそれに気付かなかった。
昨夜、裕二は私に近寄って肘掛けの下の部分に何も纏っていなかったことを確認して「ひとりでしてるの?」と尋ねてきた。私は返答しなかった(正確にはできなかった)が、裕二はどう思っているんだろう。
裕二はいったいいつ目が覚めたんだろう?
声をかけられて我に返ったときはかなりの至近距離に立っていた。ということは少しの時間、自分が一人でやっていたところを裕二に見られていたと考えるしかなくなる
リビングの戸は確実に閉めたはずなのにそれを開ける音はしなかったような気がする。
裕二に尋ねればすぐに判明することだった。でもそれを聞いてしまうと、戸を開ける音や裕二が近づいてくる足音に全く気が付かないほど、その行為に没頭していたという事実をお互い確認することになってしまう。
裕二がいつから見ていたのか。
今すぐ確認しないとずっと気になってしまうのは明らかだったが、裕二が言及しないのであれば敢えて聞かない方が良さそうな気がする。
『嫌うわけないだろ。』
あの言葉が、昨日の行為の全てをひっくるめてのものだったのか明確ではないけれど、裕二なら私が例え偏執的な嗜好を持っていようとも受け入れてくれるだろういう安心感が形成されつつあった。
昨夜のことを思い出すと平静を保つのは困難なのは変わりないが、なかったことにしてしまおうとはもう思わない。裕二の前でなら私でさえ知らない自分の一部がもし露出してしまったとしても、もうそれほど怖くはないし、そしてそんな自分を誤魔化すことなく受け入れられるような気がした。
それでもやっぱり自分の淫乱な性質を普通に会話にされてしまうのにはかなりの抵抗を感じるけど。
裕二の手がやわやわと私の肌の上を這い始めて、意識が現実に引き戻される。
「もう、ゆ・・」
裕二を呼ぼうと開いた口を塞ぐように裕二の唇が押しつけられていた。

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