キミと僕の距離 2

圭吾の祖母も加わった夕食はいつもより静かで、菜々美は大好物のコロッケをお代わりすることができなかった。食事が終わると、祖母はすぐに退室した。片付けを手伝ってからリビングのソファーでぐったりしている菜々美に、圭吾はゲームしようよと部屋に誘った。
圭吾の部屋は常に整然としている。恵が掃除しているのかと思っていたが、中学校にあがってからは彼女にはさせていないらしい。つい最近、恵から「部屋に勝手にはいると怒られるのよ。」と聞き、それを知った。狭くて雑然とした自分の部屋を思い出して、次の週末は圭吾に自室の掃除を手伝ってもらおうかなと考えていた。自分一人ではしきれない掃除も、きれい好きな圭吾と一緒なら、きちんと、しかも手早くできてしまうからだ。
「んで、新しいゲームってどれ?」
菜々美はゲームのソフトが並べられた棚から、ソフトを取り出して見ていた。
こっちにあるよ、と学生鞄の中からソフトを取り出して振り向いた圭吾に、菜々美はにやっとしながら、一枚のソフトを付きだした。
「何よ、これ。」
圭吾は慌てて手を伸ばすが、一足早く菜々美は手に持ったそれを高く掲げた。そうすると圭吾は届かなかった。すぐに諦めて、真っ赤になった顔を下に向けた圭吾に菜々美は意地悪く言った。
「圭吾がこんなもの持ってるとは。」
菜々美が見付けたものはゲームではなくDVDだった。エロアニメの。
「借りてるんだよ。」
圭吾は菜々美を睨み付けてくるが、DVDが手の届く高さに下ろされても、DVDを取り返そうとはしなかった。
「誰に?」
「吉井。」
「ふーん。」
菜々美は圭吾のクラスメートの所有物であるパッケージに描かれたアニメの女の子と圭吾の顔を交互に見てから、宣言した。
「今日はゲームいいから、これ見よう。」
驚愕で絶句している圭吾を背に、菜々美はいそいそと再生機にソフトを入れてテレビを付けると、菜々美専用と決めている座椅子に座った。
それはエロアニメだった。菜々美はこういった類は外側しか見たことがなかった。中身を目にするのは初めてで、本当は幾分不安でもあった。しかし、圭吾の手前、実はためらっている部分があることなどはおくびにも出さずあくまでも興味津々といった顔をして画面を注視していた。
始まって5分程度は普通の恋愛もののアニメと変わりなく、拍子抜けしてしまった。いつの間にか隣に座った圭吾が菜々美の気勢のそれてしまった様子を感じ取ったようだった。
「もうやめようよ。」
「いーや、最後まで見るわよ。」
恐る恐る伺いをたてた圭吾に菜々美はぴしゃりと言って、すぐにテレビの方に顔を戻した。
好きだのつきあってだのまるで少女漫画のような内容にすっかり気が緩んでいた菜々美はつきあい始めた二人が突然絡み始めたのに体が強ばってしまった。キス以上のことをアニメとはいえ動画で見るのは初めてだった。キスもドラマで見るのとは随分違っている。お互いの舌を突き出してまるでそれを食べるかのようなキス。二人の口の周りは多分唾液らしき液体でベタベタ光っているし、二人の舌がこれまで菜々美の描いていた想像上のキスはまるで花が舞い散るような素敵な雰囲気だったのに、目の前のそれには全くその片鱗も見当たらなかった。
制服を着崩した男の子が彼女の全身をいじりながら、服を脱がせていく。女の子は彼氏の手や唇の動きに合わせて悩ましげな声を上げ、それとは別に始終、水音のようなものがうるさく響いている。
ついに女の子の下半身が露わになった。圧倒されながらも、アニメなのにちゃんとモザイクがはいっていることに菜々美は感心する。
動揺している反面、冷め切っている部分もあって、画面上の女の子の胸が仰向けになっても形が崩れないなんておかしいよなとか、シャワーを浴び訳でもないのに全身がなぜあんなに濡れているんだろうとか、いろいろ考えていた。どちらにしても、とにかく画面に集中していて、少し離れたところで何も言わずに同じようにテレビを見ているはずの圭吾の様子には全く考えが及ばなかった。
突然、圭吾が菜々美の腕を掴んだので、驚いて振り向いた。
「ななみ。」
掠れたような声は、まだ声変わりもしていないのに、先程まで目にしていたアニメの男の子のようになんだか切羽詰まっていた。圭吾の顔が近づいてくる。


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