いつかその声で

コードギアス最終回から2週間。
頭の中での妄想を書いてみました。
二次創作は初めてな上に、記憶間違いな部分もあるだろうなあと思いつつ。
とにかく私の妄想ですので、つっこみどころ満載であっても、適度に流してください。
客観的間違いはまた教えてください。
ではどうぞ。



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いつかその声で



僕は地下フィルターへのエレベーターを降りていく。
地下3階にエレベーターが着いて扉が開く。
エレベーターと同じ幅しかない廊下の先には金属製の分厚い扉があり、手前には腰の高さほどの入力装置がある。
その装置に歩み寄り、黒い手袋をぬぎ、右の手のひらを平面の読み取り画面にかざす。手紋照合だ。この装置の構造はもちろん、制御の仕方も僕には分からない。この装置に僕の手紋の入力設定をした技術者は僕ではない。つまり、僕以外がゼロの手紋の情報を扱っているというわけだ。
僕がゼロであることを知っているのは本来なら誰もいないはずなのだが、ナナリーにはゼロ復活の直後にばれてしまっていた。あの時の話はナナリーにとってはいまだにかなり辛いらしく、詳しく聞いたわけではないのだが、ルルーシュの最期を看取ったのはナナリーで、その時に「見えたのです。」と言っていた。分かったのではなく見えたということは、彼女の能力でルルーシュの思考と同調したのかもしれない。
あの時にナナリーがルルーシュの思考の残滓を読み取れなかったとしても、ゼロが皇女ナナリーの側近として仕えるようになったことを考えると、いずれ明らかになっていたに違いない。
全盲となっていた期間にとぎすまされた彼女の聴覚と嗅覚は視力を取り戻していからも、やはり普通の人よりはずっと鋭かった。それに、ナナリーは、ずっと一人で暮らしていた自分にとって、最も長い時間をともにした存在ともいえるのだ。そう、ルルーシュを除けば。

皇室直轄の研究室の上層部には僕の生活の必要上、知らせた。今、こうしてゼロ専用のセキュリティーを整備できたのもロイドさんのお陰だ。
ルルーシュがゼロなら、機械の製作までは無理でも、それ以降のメンテナンスは自分の好きなように設定できただろうから、研究室に正体を知られることもなかったのかもしれない。しかし、僕はコンピューター関係は苦手で、こんな複雑な操作はできないと最初から諦めていた。
だから、ナナリーに相談して、ゼロの正体をロイドさん達には明かしたのだ。
知らされた時、仮面の中からでは、ロイドさんの驚きは伝わってこなかった。少し、遅れたものの、
「そうですか、なるほどねえ。」
とあのいつものおどけた調子で答えただけだった。
もしかしたら、ゼロが僕であることを薄々感づいていたのかもしれない。
僕という人間を知っている人達はみんな口には出さないものの、ゼロの正体に気付いているのではないのだろうか、と思うことは度々ある。
しかし、誰もそれを暴こうとする者はいない。あの頃と違ってゼロの正体はどうでもいいことなのだ。それが誰であろうと構わない。ブリタニア人であろうと日本人であろうと。
ゼロが象徴として存在すること。それによって世界は均衡と調和を保っているのだ。ゼロレクイエム当時に比べれば、その意義は薄れてしまったかもしれないが、それでもなお、有効な切り札として僕は仮面をかぶっている。

手紋を読み取った装置からピピッと処理音がし、画面の一部が点滅すると、合わせて扉の上部も点滅した。扉の中央の読み取り画面に再度右手を押しつけると、照合音のあと、シューッと音がして扉が開いた。
中には誰もいなかった。
ここに入ってこれるのは、ナナリーと僕、そして、選ばれた医療技術者だけ。
部屋の中に足を踏み入れると背中で扉が閉まった。入り口の脇の壁に取り付けられたロック装置を作動し、何者も入室できないようにした。
部屋の中はガラスで区切られていて、ガラス張りの向こうへは消毒ルームを通らなければ入れない。僕は仮面と手袋を外して、白く煙った中へ足を踏み入れた。この中で10秒待たなければ、次の扉が開かない仕組みになっている。中は少し温度が低かった。少しすると、バシャッと音がして閃光が放たれる。目の前が真っ白になるが、体にはなんの刺激も感じられない。この光はちょうど消毒ルームに拘束される時間の中間時に浴びせられる。
1、2、3、4、5、 と心の中でカウントし終わるとちょうど面前のガラスドアが両脇に開いた。
それと同時にこれから進む先の照明が一斉に点く。ずっと薄暗い中を進んできたので、まぶしく感じる。いや、このまぶしさは先程の閃光のせいかもしれない。
ガラス張りの内側も部屋はそう広くない。壁も天井も床も真っ白で、ベッドと数種類の医療機器、白いワゴンの上には液体の入ったパックが置かれているだけだ。数歩進むとベッドに突き当たる。
簡素なベッド。
「ルルーシュ。」
僕は白い布団の上に横たわる人に声をかけた。ルルーシュにの身に付けている物も白、かけられた薄い布団ももちろん白だった。
真っ白の中にあってもなお、ルルーシュの肌は透けるように白く見えた。
自分の手をそっとルルーシュの鼻先にかざすと、微かだが、はき出される息を感じることができた。全く動かない彼の生きている証を僕は来る度に手のひらに感じる温かい息のかけらで確認していた。
膝をついてルルーシュに近づく。
あの日、僕が刺した剣は確かに彼の胸を貫いて、大量の血を流して彼は死んだ。あの場面を見た者は誰もがそう思っただろう。
ジェレミアが親衛隊に引くよう命令すると同時に救護班を呼びつけ、泣き叫ぶナナリーと共にルルーシュの亡骸を即刻運び出して行くのを、僕はそれまでルルーシュが座っていた王座の前に立って見ていた。群衆は「ゼロ!ゼロ!」と繰り返し、どこかに潜んでいたらしい反乱軍が死刑台に運ばれていくはずだった囚人達を解放していった。現場は混乱していたが、ゼロの親衛隊がゼロの遺体と一緒にあっさりと引き下がってしまうと、コーネリアが指揮を取り始め、その場は次第に整理されていった。
俺が王座から飛び降りて反乱軍や囚人として捕らえられていた人々と行動を共にしている間に、皇室直属の特別医療班のICUでは緊急手術が行われていた。
全てはルルーシュに忠誠を誓い、彼の行動の意味と、ゼロの正体を読んでいたジェレミア卿の取り計らいだった。そうだ、ジェレミアもゼロの正体を知っている一人だったが、今はもう皇室とは全く縁のない場所で生きていて、会うこともない。


それにしても、医療の発達はすばらしい。
あの2年前にはユフィを生かすことのできなかった技術も、僕が空しい戦闘を繰り返している間に着実に進歩し、誰もが疑わなかったルルーシュの死を覆してしまったのだ。
それを知ったとき、ナナリーはまたもや泣き崩れた。違う意味を持つ涙を流して。
「お兄様に会わせて。」
ナナリーの願いが受け入れられたのはそれから1か月後のことだった。
その時は僕も着いて行ったが、仮面を付けたままだったので、ルルーシュにすがりつくナナリーを離れたところから見ているだけだった。ルルーシュの状態は落ち着いていたので、それ以降は自由に面会を許された。状態が落ち着いていると言えば聞こえはいいが、脳死状態であることが定着したというだけのことだった。
皇帝ルルーシュの生存はもちろんトップシークレットだった。ゼロの正体よりも知られるわけにはいかないと僕は考えている。それでも、ルルーシュの心臓を動かし続けるためにはいろんな人間の手が必要となったから、実際はゼロの正体を知らせた人間よりも遙かに多くの人間を巻き込むこととなった。
それでも、担当者となる人間は全てナナリーと僕が面接をして決定していたから、秘密は頑なに守られている。

少し冷たい頬に触れる。その肌の感触。何も変わりない。指を唇に当てて、その柔らかさを実感する。
びっしりと埋められたまつげにも触れてみる。確かな感触があることに安心する。しばらく彼の顔を撫でてみる。
「ルルーシュ。」
声をかける意味はないのだが、つい、呼んでしまう。
最初の内は今にもその瞼を開けるのではないかとあらぬ期待を抱いてしまっていたが、10年以上も経った現在、そんな期待に煩わされることはなくなった。
いや、違う。期待を捨ててはいない。捨てられるわけがない。ただ、そんな期待を不用意に表層意識に上らせるのをやめただけだ。
ここの部屋は通常よりも酸素濃度が高い状態に保たれているから、ルルーシュは酸素マスクなしでも息をすることができた。
だから、普通なら遮られるはずの唇にこうやって自由に触れられた。僕はほぼ毎日、幹事館に戻って来られた日には必ずここを訪れた。自分の部屋の何層か下にあるルルーシュのための部屋。
仮面を外すのは自室で一人となったときか、この部屋にルルーシュと二人きりになったときのみ。ゼロの正体を知っている人の前でも、僕は決して黒の仮面をとることはなかった。ナナリーに数回、顔を見せてくださいと懇願されたが、僕は固辞した。例え、ゼロの仮面の下にどんな顔があるのか知っている人間がいたとしても、枢木スザクを見せるわけにはいかない。なぜなら枢木スザクは消滅してしまったのだから。
ナナリーは結婚してこの領事館から出てからは、この部屋を訪れる回数が減った。
12年。
正確にはゼロ・レクイエムから12年と約3か月が経ってしまった。世の中は変わった。
あのリヴァルやカレンでさえも親になったらしいと人づてに聞いた。
人はみんな当たり前に歳をとっていき、ナナリーにも少女だった頃の面影は薄れてしまった。。
なのに、僕は年をとらない。
鏡の中の自分の顔はずっと18歳のままだ。自分以外に見せることのない素顔があれから全く変化していないことに気付いたのはいつだろう?
体の機能の衰えを全く感じないことへの違和感はつい最近まで自覚がなかった。25歳を過ぎれば、肉体は外観も性能も次第に衰えていくものだということが当たり前であることをずっと忘れたままでいられたのは、実際自分の体に何の変化もなかったからだ。

「生きろ。」
それは死と直面したときに意思とは無関係になされる行動という形で発露していた。
それだけだと思っていた。
しかしそうでないなら?
ルルーシュのギアスが神経系統だけでなく、脳内ホルモンの分泌にも影響を及ぼして、そのせいで僕の体内が死とは逆の方向へ緩やかに変化しているとしたら。
僕は永遠に死ねない体を持ってしまうのだろうか。
この仮説は正しいのかどうかまだ検証はできない。僕の体を医療班の前に差し出すわけにはいかなかったし、それなりに鍛錬していることが若くいることの原因でないとも言い切れない。まだ僕は30歳なのだから。
ルルーシュなら、
「今までお前気が付かなかったのか?ほんとにスザクの鈍感さには呆れるよ。」
とでも言って僕をからかうのかもしれない。
ああ、ほんとに。
ルルーシュがそう言って笑ってくれたなら。
僕はこの運命もなんの懸念もなく受け入れられるのに。

ルルーシュも全くあの時と変わりなく見える。新陳代謝が押さえられた状態なので、彼の細胞の成長は最低限にとどまっているらしい。それはつまり、歳をとっていないということだ。
いや、歳はとっている。目を閉じたままのルルーシュも仮面をかぶり続ける僕も、心臓が動いている限り、勝手に歳はとっているのだ。だから二人とも30歳になった。
ただ生物的、肉体的な加齢現象はほとんど見られない。多分18歳のままだ。
ギアスの有効期限についてはよく分からない。少なくとも、今の段階でシュナイゼルにかけられたゼロへの従属というギアスはまだ解けていないようだ。ルルーシュが生きている間はそれが有効なのか。それともルルーシュの生死に関係なくかけられた人間の命が尽きるまで有効なのだろうか。
ギアスの有効期間はきっと検証できないだろう。少なくとも僕にかけられたギアスについては。

ルルーシュと共に死ねたらいい。
自分にかけられたギアスの効能に気付いたとき、僕は絶望と共に、一縷の望みを託した。ルルーシュの命が尽きたときに僕にかけられたギアスも消滅してくれないだろうかと。
しかし、最近、また別の願いが生じてしまった。それはひどく甘く、僕を捉えて離してはくれない。期待してはいけないと戒めながらも、この部屋でルルーシュの手を握りしめるたびに。
僕とルルーシュの生体機能がもし衰えないとするならば、僕たちは長くこの世に留まっていられるということで、それはつまり、世の中の変化を、進歩を見ていられるということだ。
そう、もしかしたら、今は不可能であるルルーシュの死滅した脳の一部分を蘇らせる技術が確立するかもしれないのだ。いったい後何十年待てば、それが現実のものになるのかは分からない。
しかし全くあり得ないことではないだろう。

僕はゼロとして生きよう。
仮面の下の素顔は誰にも見せず。いつか、自分以外の瞳に僕の素顔を曝せられるその日まで。
『スザク。』
ルルーシュが僕を呼ぶその日まで。


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どうだったでしょうか。
余りにもご都合主義だったかもしれませんが。

翔の書くオリジナル小説のサイトです。
内容的にはコードギアスと全く関係ないのですが・・・・。
「月の石」 
http://moonstone.hanabie.com/

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